感謝の苺
“病院のお仕事は大変なお仕事です。
お身体に気を付けてお過ごしください。
この度は本当にありがとうございました。”
達筆な字で書かれたお手紙と共に、高級な苺が箱詰めされ、受付宛に送られてきた。1箱2パック入りで3箱も。送り主は高齢の女性の方で、落とし物(お財布)を届けてもらったことが嬉しくて、つい先日も受診で来院された際に、感謝の気持ちを丁寧に綴られたお手紙を手渡して下さった。「少しだけどお茶でも皆さんで召し上がって」とお金も入っていたので、お手紙だけ有り難く頂戴し「本当にお気持ちだけで結構ですので…」とその時は外来へ向かっていただいた。余程嬉しかったのだろう、診察が終了し帰り際にまたお立ち寄りになり、「今度果物でもお送りしますわ」と仰るので、「お心に留めていただきありがとうございます。お気遣いなく…」とお見送りしたばかりだった。お財布が手元に戻った際、親切にしていただいたのにその時は体調が優れず、お礼の言葉を満足に伝えることなく帰ってしまった事がとても気掛かりで、悩んでいたのだそう。「どうかお気になさらず」と申し上げ、こちらは業務の一環として行っていることもあり、大変恐縮してしまった。
毎日たくさんの方にお会いする。感染対策は怠らないつもりでいるけれど、いつどこで感染してしまうか分からない。悲しいニュースに胸が苦しくなる。明日は我が身。常に危険と隣り合わせでいることを忘れてはならない。それでも変わらず笑顔で(マスクをしているけれど)対応させていただいている。こんな時だからこそ、人と人との繋がりの大切さや、あたたかな言葉にホッとする。いつもそう感じるから、やはり自分もそういう人でありたいと思う。
一日も早く、安心して過ごせる世の中になりますように…。
大粒の苺。甘酸っぱい春の味。心のこもったお手紙に、胸がいっぱいになった。
感謝。
人生の道程
「99歳9ヵ月、ようやくたどり着きました」
インフォメーションに現れた彼はそう言うと、雨で濡れないようにと大きなビニール袋に入れたリュックの中から診察カードと予約票を取り出し、笑顔で「案内していただけますか?」と続けた。受付の場所まで一緒に歩く道中「先に逝くなよ」と言っていた奥様は数ヶ月前にお亡くなりになったと話されていた。「朝目が覚めるとまだ生きてるんですよ。自分が生きているのが不思議なくらい」と。
もうすぐ100歳。気軽に話しかけて下さるけれど、長い人生の道程をおもうと、わたしなんてまだまだひよっこだなぁ…なんて恐縮してしまった。ひとりでバスに乗って来たと言うその方は、とても信じられないくらいに足腰もしっかりされている。子どもの頃イメージしていたお年寄りとはだいぶ違っていて、本当に驚く。
わたしは何歳まで生きるのだろうか。そんなことは誰にもわからない。けれど、もしもこの先たとえひとりになったとしても、心穏やかに過ごすことができたなら、どんな人生であれ、それが全てだとおもう。一日一日を大切に。
明日も笑顔で…。
*kaorin*